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2019年11月22日

砂漠(12) アルベール・カミユ 柏倉康夫訳

 立ちどまらなくてはならないとすれば、それはこの均衡の上だ。それは奇妙な一瞬で、霊性が道徳を拒否し、幸福が希望の不在から生まれ、精神が肉体のなかにその理由を見いだす瞬間だ。あらゆる真実はその裡に苦さを湛えているのが本当なら、あらゆる否定は、《肯定》の開花を含んでいるのは本当だ。そして、凝視から生まれる希望のない愛のこの歌は、行動のもっとも効果的な軌範を示すこともできる。ピエロ・デッラ・フランチェスカが描いた墓から出て甦るキリストは、人間の目差しをしていない。その顔には、幸福なものは何も描かれていない――あるのは魂のない猛々しい偉大さだけで、わたしにはそれが生きる決意と受け取れて仕方がない。賢者は愚者と同様、わずかしか表現しないからだ。わたしはこの甦りに感動する。



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